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高森明勅
2019.2.18 08:00その他ニュース

2種類の祝日

わが国の祝日は16日ある。

それが2種類に分かれる。

1つは、“客観的な”事実に基づいて必ず
「その日でなければいけない」祝日。

元日、憲法記念日、天皇誕生日の3日
(祝日名に“の”が付かない)。

もう1つは、必ずしも
「その日でなくても良い」が、
複数の候補の中から最も“相応しい”日を
選んで決めるもの。

上記の3日以外の祝日だ
(全て祝日名に“の”が付く)。

後者は歴史的な由来や国民の価値観、
伝統意識などを背景に“主体的に”選ばれる。

前者の場合は、例えば「元日」だと、
国民は“年の初め”を祝うかどうかだけを
選んでいる。

「祝う」と決めたら、
日付は選択の余地なく“1月1日”に定まる。

ところが後者は違う。

例えば、「建国を偲ぶ」祝日を
求めるかどうかに加えて、
更にその祝日を設ける場合は、
何月何日が最も相応しいかを選ぶ。

従って、後者の方が、
国民が“より”能動的に選び、
価値観を“より”反映した祝日とも言える。

但し後者の中には、
何故この日付にしたのか、
分かりにくいケースも見られる。

例えば8月11日の「山の日」。

この祝日制定を推進した議員連盟は当初、
お盆休みと“繋げる”つもりで8月12日を
予定していた。
ところがその日は、
日本航空123便墜落事故(昭和60年)
があった日に当たる。
大惨事があった日を“祝”日にするのは、
勿論、適当ではない。

その為、やむなく1日前倒ししたとか。
訳が分からない決め方をしている。
最初にお盆休みと繋げようとしたあたりから、
既に「山の恩恵に感謝する」という
この祝日の趣旨とは、殆ど無関係だ。

後者の場合、
必ずしも特定の日である必要はない。
しかし、だからと言って、
いつでも良いのでは勿論“ない”。

祝日の趣旨に照らして、
“最も”相応しい日を選ぶべきだ。

その日付の選定には
十分な検討が欠かせない事を
改めて確認しておきたい。

2月5日に放送された
「この差って何ですか?」(TBS系)
の制約された時間枠内での私の説明を聴いて、
勘違いをした視聴者がいると困るので、念の為に。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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